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2017年10月20日16時00分
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レオン捕虜7 (2/2) 最終話。

2009年08月30日23時54分
エレレオ捕虜パロ
最終話(7話)-2/2
  2-12-2  3-13-2  3.5
4-14-2  5-15-25-3
6-16-2  7-1

これでおしまい。ぜんぶおしまい。
いままでありがとう。
・・・さよなら。








「アルカディアを堕とす」
 ただの群れでしかない雑兵共は、その号令に歓喜する。
 統率者のいない国相手、勝利の約束された戦いにゲーム的な楽しみを感じているのだろう。馬に跨り駆けだす彼らに緊張の色は少ない。
 普段であれば見逃すことの出来ない油断であるが、其れをいちいち注意しようなどとは思わない。
 私も先陣を切り、駆けだす。懐に、荷を抱え。
「閣下。顔色が優れませんが、」
「…。」
 並走するオルフが問う。
 しかし言葉は返さない。返す気も、起きない。
 嗚呼、世界が暗闇に落ちていく。漆黒はすぐ背後に迫りくると感じながらも、最早それに歯向かう事も出来ず。

 障害となるものなど最早無かった。
 アルカディアの戦力は先の戦で大半を失い、統率者も、代わりとなれるであろう腹心も失い。所謂残党狩りでしかないこの戦い、わざわざ私が赴くまでもなかっただろう。
 それでも私が来る必要があった。
 私が来なければならなかった。
 私が、全てを終わらせる為に。


***


 王の間。それは部外者が立ち入る事の許されぬ神聖な場所。其処に足を踏み入れることこそ正に侵略の証。
 そして今、荘厳な扉は開かれ此の場所に立つ。
 この間で待つ、アルカディア最後の王族の元に。

「…アメティストス……」
 美しきブロンドに高級な布を纏った女性。アルカディア王の、レオンティウスの…母。
「初めまして、…等と挨拶は必要か?」
 彼女は無言で首を横に振る。悲しくも凛とした瞳は気高き王族の証。朽ち果てるのをただ待つだけであるこの国で、未だ誇りを失わずいるその姿に、亡き王の姿を重ねる。
 顔立ちこそ似てはいないが、その瞳に宿るものはよく似ている。…否、顔立ちも似ているのだ。そう、…妹に。
 それこそが、紛れもない事実を私に突き付け、思わず言葉を詰まらせる。
 対する彼女も無言。恐らく、いや確実に彼女は私が誰であるかを理解している故だろう。レオンティウスもあの戦の前に母は気付いている様だったと言っていた。だからこそ私が弟であるとわかった、とも。
 そう、私が今対峙している女性は私の、母。
 兄の話した事を全て信じるならば、私達を産みすぐ神託により引き離され、誰よりも其れを悲しんだという女<ひと>。
 単純に興味があった。形はどうといえ私達を手放した事に対する恨みは多少なりとも存在するけれど。私を産んだ女性、会えるのならば会いたいと思った。
 だが私自ら此処を訪れたのはそんな理由からではない。
「……アルカディアは今日滅びる。……土産だ、受け取るがいい。」
 小脇に抱えていた荷を乱雑に放り投げる。
 簡易的にまかれただけの布は転がると簡単に剥がれおち、彼女の足元へたどり着く迄にその内包物を露わにした。
「…っ!」
 それを目にして女の顔が初めて揺らぐ。
 息を呑み、転がるソレに手を伸ばすことを躊躇い立ちすくみ、ソレと私の顔を数度交互に眺める。
「久々の再会であろう、何もかける言葉はないのか?……なんて、な。」
 対峙する敵軍の将軍として口元を釣り上げ、不敵な笑みを浮かべ…嘲おうと、…演じる事は難しく。作りかけた笑みはすぐに消え、続く言葉を発すために一息おく。
「それは、私が殺した。」
「…ッ!」
「お前達の王は、既にいない。私が殺した。」
 そう、彼は私が殺した。




 横たわる無言の人形を前に、世界から色は失せていく。
 ゆっくりと腕をのばし触れようと、その肩を揺さぶろうとも、事実は変わらず眠る獅子の瞼が開くことはない。
 間に合わなかった。わかっていたのに、どうする事もできなかった。残された砂時計の少なさを知っていたのに、私だけが知れたのに、まだ大丈夫だなんて幻想を信じようとして。
 ―失ってしまった。
 全てを失くした私の前に現れた、彼。それは失った筈の家族。
 再び手にした宝石は暖かく、私の空白を埋める代わりにこそならないが、新たなものを与えてくれた。
 大事な宝石が簡単に壊れてしまうことを知っていたはずなのに。
 しっかりと掴んで握りしめていなければ、すぐに零れ落ち壊れてしまうものだと知っていたのに。
 ”私が殺した”。
 失う可能性をわかっていながら留めておけなかった私の責任、それは私が殺したも同意。
 いや、そもそも。彼を捕え生かし、ひたすらに虐げ。最初にそうしたのは私であり、だからこそ他の者達まで手を出し、結果彼を壊した。全ては私の責任なのだ。
 失いたくないなど、許されない愚かな希望を願ってしまった私の、罪。
「…ごめん、兄さん。」
 落とした剣を拾い、握りしめる。
 失った。
 取り返すことはもうできない。
 希望も何も、…もう残したくない。
「さよなら」
 流れるひとつの雫と共に、黒き剣を振り下ろした。




「アメ、ティストス…、何故、貴方が…」
 この女は、私が真実を知っているとわかっているのだろうか。発言の意図する所はそれを前提としたもの。
「私は、貴様達の、敵だ。 其れは、我が軍の勝利の証。」
 転がる勝利の証拠品。瞳の閉ざされた物言わぬ骸、亡き王の、頭部。
 切り落とし、この手に抱えここまで来た。
「…貴女に、返したかった。」
 それは私のエゴ。
 真実を知ってなお、光に向かう道を選べなかった、見つけられなかった私の、せめてもの詫び。
「長い事借りた。…十分だ。…十分、”家族”を、見せてもらった……」
「……、」
 本当は、ずっと――
 もう、願うことは許されない。
 兄を失えば、次は母だなんて、愚かにも程があるだろう?
 私は手に入れる為に此処に来たのではない。
「さぁ」
 顔をあげ、目をあわせる。
「貴女も、すぐ此奴の元へ向かわせてやろう。」
 腰にさした剣を握り、ゆっくりとその刃を顕す。
 これで最後だ。これで全て終わる。これで、全て、

「すみません、…母上」

 全て、失う。

「エレ…ッ!!」
 一閃、鋭く鈍い鉄が肉を切り裂く。鈍い感触が手に伝わり、どさりと鈍い音がして物言わぬ人形が一つ増えた。
 荘厳な王の間も美しきブロンドも赤に浸り、輝きを失う。あたりに訪れる静寂、破るものは自分を除いて誰もいない。
「…、さよなら…」
 その亡骸の傍に膝をつき、もう一度、剣を振り上げ、垂直に、降ろす。
 身体の中心を貫き地へと突き立てられた其れは、墓標。手向けの花は、彼女の子。

「…私には、もう、何も…残されていないのです」


 嗚呼、全て、おわった。

















***


『ヤァ――』

 嗚呼、遅かったな。

『我ガ器、無事母ハ殺メラレタカィ?』

 もう、何もないよ。

 さよなら
 さよなら
 …さよなら。


 やがて意識は呑まれ、私の全ては消え去る。





 見たかったのは、へいわなみらい

 もう、かなわない。







end

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