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2017年10月20日15時55分
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レオン捕虜7 (1/2)

2009年08月30日23時45分
エレレオ捕虜パロ
最終話(7話)-1/2
  2-12-2  3-13-2  3.5
4-14-2  5-15-25-3
6-16-2

助かるシナリオなんて存在しないわよ?
それでも構わない?クスクス…じゃぁ頁をお捲りなさい?





 たかだか七日程度の別れでは何も変わらない。
 この扉の先には彼がいて、やわらかな笑顔で「おかえり」とあたたかく迎えてくれるから
 だから、僕も微笑んで、「ただいま」って

***

 自然と駆け足になるのを止められなかった。
 急いていた。今更自分の思いを偽りなどしない。私は一分でも一秒でも早く、彼の姿を見たかったのだ。
 地を踏みしめる度にずきりと足が痛む。
 それは戦場で負傷したもの。戦そのものは我ら奴隷軍の勝利であるし、戦況も良かった。それでも手傷を負わされたのは、気が散漫であったせいに他ならない。
 気がかりだった。現在の拠点へと一人置いてきた彼が、捕えた敵軍の王が、日に日に痩せていく彼が、黒い影を背負った彼が、それでも微笑んで私の頭を撫でてくれる優しい兄が。
 離れたくない、もう二度と大切な家族を失いたくない、でもそんな我儘を口に出せる様な、そんな温い地位<場所>に私はいない。
 はやく、早く、速く!
「閣下、おかえりなさ―…、閣下?」
 見張りに残した兵が敬礼するが目もくれず、駆け抜ける。奥へ、あの部屋へ、はやく、はやく

「レオンティウス!」
 駆けた勢いを止めぬ儘、扉を開け放つ。
 視界に飛び込む白い部屋、柔らかなベッドには彼の姿が
 彼の姿が
「レオ…ン…?」
 見当たらない。
 それなりに広い部屋だとはいえ、其処は個室のひとつに過ぎない。まさか部屋の入り口から全体を見回せないという事は決してない。
 首を左右に振り、足をゆっくりと中へ進め、確認する。上下にも視線を動かす。だけど、いない。
 いない。
 全身を駆け巡る悪寒、予感、胸騒ぎ。彼はどこへ、どこだ、何故――
「閣下、この度の戦も見事で――」
「レオンはどこだ」
「は?」
 背後よりかけられた部下の声を遮り、振り返らず問う。
「レオン、ティウスは……、…。…アルカディア王は、何処にいる」
「は、………あ、それ、は」
 歯切れが悪い。言い淀む、ということは
「何処にいる」
 こいつは、知っている。
 私が求めるものの在処を、私が見失った姿を、言い淀み、伏せている。
 振り返り、視線を合わせ、威圧する。するといとも簡単に、蛇に睨まれた蛙の様に竦んで姿勢を正した。
 そして、彼は、その所在を
「は!……そ、その…地下牢…、に…」

 嗚呼、何故。


 地下牢、この神殿の地下に広がる、収容所。
 暗く、日の差さぬ広大な空間は、点在する灯を失えば漆黒と化すだろう。
 石造りの階段を下りれば耳障りな冷たい足音が反響する。
「! 閣下!?」
 降りた先に備えた看守は私の姿を見るや否や、狼狽する。
 何故慌てる、何故私を引き留めようとする、何故私の進路に立ち行く手を阻む、ああ、その様子が全てを物語る。
 苛立ち男を押しのけ最奥へと足を進める。左右の牢に捕えられた者たちが見上げる。汚い言葉が飛び交うがそれはただの雑音。
「閣下、お待ちください!閣下!」
 響くその声に、奥に配置された別の看守も気づき、此方を見ればやはり狼狽する。
 やはり、彼はいる。
 この最奥に、暫く前まで私が閉じ込めていたあの部屋に。
 早く、早く、はやく
 何故だ、何故これほどまでに震える、胸が騒つく。

「―――ヤァ、息仔ヨ―――」

 背後で、影は嗤う。


***


 一瞬の安堵と、深い絶望――。
「レ、オン……」
 牢の前にたどり着けば、彼はすぐ足元にいた。否、あった。
 檻のすぐ前へその体を横たわらせ、眠っていた。眠っているように、見えた。
 看守から鍵を奪い取るようにして、牢の錠を開ける。
「……、閣下、そ、の…」
 早く、彼に触れたい、顔が見たい、
 はや、く、
 いやだ
 触れたくない、見たくない
 …知りたくない。
「…おい、」
 その言葉は横たわる彼に向けたものではなく、狼狽し私の様子を見やる男へと。
 認めたくない、だが
「何故だ」
 全身を襲う虚脱感。張り裂けそうな言葉を押し殺し声が震える、頭が真っ白になりそうになる。
 目をそらす事もできず、当然事実は変えられず、既に
「何故、こいつは死んでいる」

 黒い影は、もういない。

「そ れ、は・・・あ、え、・・・ヒッ!!」
 瞬時、男の喉元に切っ先が向けられる。男は喉を鳴らし、震え上がった。
 立ち竦む姿は弱々しい兎か何かのようで、その喉からは「あ」とか「え」とか、単体の文字が途切れ途切れに漏れるのみ。
「聞こえなかったか?何故、この男が此処で死んでいるかを聞いている」
 低い声で問い直す。 言葉を濁らすな、私が知りたいのは―
 押し殺す感情より剣を持つ手は小刻みに震え、いつその肌を掠めるかわからない。
 男は怯え、そして、たどたどしく語り始める。この僅かな間にあった、語るに足りぬ愚かしく、些細な事象を。

 それは聞くまでもない単純かつ明快な事象。
 私を敬いながらも、いや、それ故にか、私がアルカディア王を構うことを良しとしない者達がいた。
 牢から出され自室に留まらせるなど言語道断、私が不在のこの期間だけでも再び地下においやってしまえ、ということだ。
 だが彼の死は彼らにとっても誤算。
 私の命には忠実な彼らだ。私は、死すれば捕虜としての価値はない、など尤もらしい空言を並べ彼が死なぬよう注意しろと命じていた。だからどれ程疎ましくとも、殺すつもりはなく、ただ以前と同じよう玩具にして虐げたかった。
 そして私が戻る報を受ければ何事もなかったかのように、牢から出そう―。
 しかし彼らの想像以上にレオンティウスは衰弱していた。昨日食事を運びに来た時には今と同じ姿で、既に動かぬ人形と化していた。
 私の帰還に看守が狼狽したのはそれ故である。咎められることを恐れてであろう。現に今、私は彼に剣を突き付け詰問していた。

 嗚呼、本当に単純なことだった。 
「…下がれ」
 力なく、剣をかまえる腕をおろせば男は詰めていた息を吐き出す。
「上へ戻っていろ。私が上がるまで、けして降りてくるな。他の者達にも伝えろ」
「…はっ…ッ」
 逃げるようにして、彼らは立ち退く。速足な足音はすぐに遠退き、やがて静寂が訪れた。
「……、」
 がくりと膝を折る。手からこぼれた刀が冷たい床とぶつかり音を鳴らす。
 眼前に横たわる体は見下ろせど、ただ、黙したまま。



 また、まにあわなかった。




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