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2017年10月20日15時59分
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レオン捕虜4 (2/2)

2009年01月28日22時50分
エレレオ捕虜パロ
4話後半。 展開突入

  2-12-2  3-13-2  3.5
4-1

R-18、レオン捕虜、陰鬱
基本勢い任せ執筆。誤字があればご指摘下さい。


本文は続きを読むでどうぞ


4(2/2)



 二ヶ月が経った。
 今回の戦はなかなかに手こずった。
 とは言っても、自軍の勝利は揺るがず、大きな損失も無い。
 だが、あれこれしているうちに、そう、二ヶ月だ。二か月もあの地を離れる事となってしまった。
 あの地、イーリオン。
 落とした神殿は拠点にするに都合が良く、その地下に構えた牢はかつてこの地に座った愚かな神官の趣味を表すかの如く広く。
 漸く、戻って来た。
 何を、心待ちにしていたのだ、自分でも笑えるぐらい。オルフがもし心を読めるのならすぐ様この軍を離れたくすらなるのではないか?
 
 それにしても相変わらず此処は昏く、寒い。
 カツン、カツンと石造りの階段に足音が響く。
 窓もない地下を照らすのは蝋燭の灯だけ。それが尽きれば完全なる闇が支配する事だろう。
 迷路の様に広がる通路の左右には檻に閉ざされた幾つもの部屋。
 中に捕えられた者たちは恨みと罵りの言葉を私へ向ける。
「奴隷」「下賤な」
 その奴隷に敗北し自由を奪われているのは誰なのやら。呆れて何も言えん。
 暫く足を進めれば煩い声も遠ざかる。
 牢番の一人と擦れ違う。彼は私を見るや慌てて背筋を伸ばし頭を下げると、急ぎ足でその場を去る。
 その最奥、静寂に包まれ隔離された様な部屋に、彼はいる。

 正直に言おう、私は彼に会いたかった。
 この二か月、どれほど帰還の日を待ちわびた事か。
 オルフに呆れられるのも仕方無い。
『彼を好いているのですか?』
 と、広義の意味では間違いない。
 実に馬鹿らしい。あれほどまでに憎んでいた相手だというのに。
「久しいな、レオンティウス」
 部屋の隅に置かれた寝具の上には見なれた人影。
 早くその声で、私の名を。
 まるで恋ではないか。決して違うけれど、傍から見れば違いないか。
 今や彼しか呼ばぬ私の名。初めは忌むべき事実を突き付ける言葉でしか無かったのに、それがとても愛おしく感じるようになったのは何時頃からだったのだろう?
 錠を開け、中へと足を進めれば、いつもの様に彼は顔をあげ私の名を、

「・・・?」

 影はぴくりとも動かない。
 後ろ手に開いた戸を閉め、牢室の奥に佇む彼の元へと足を運ぶ。
 眠っているのか?いや、横たわってはいない。寝起きに上体を起こしたまま呆けている様な姿勢のまま、動かない。
 動かない?
 いや、生きてはいる。呼吸に合わせて僅かにだが肩は上下している。注視しなければ判らない程ではあるが。
 俯き、座ったまま眠っているのだろうか。
「…レオン、」
 触れても良いものかと恐る恐る、その頬に手を伸ばす。
「……、…」
 触れた指にほんの僅か、下手すれば気付けない程度に揺れ、
 漸く、酷くゆっくりと。彼は顔をあげ、
 その視線を
「レオンティウス?」
 視線はただ正面を、焦点はどこへ?定まっていない。ただ虚空を見つめ、微動だにしない。
 何度か名前を呼ぶ。
 おかしい、どうした?肩を揺らす。
 そうして漸く彼は変わらずゆっくりとした動きで、此方に視線を向けた。
「アメ…ティス、トス…?」
 酷く酷く小さな声で口にした名は、皆が呼ぶ名と同一のもの。
 彼は変わらず虚ろな目のまま、口元を僅かに綻ばせる。
「帰って、来ていたの、ですね」
「・・・レオン?」
「?」
 何か変でしょうか?とでも言いたげに、そっと首を傾げる。
 何かも何も、それは、こっちの台詞だ。
 おかしい。
 いや、正常でない事は一目見た瞬間から判り切っている事だ。だが。
 如何したというのだ?
 私が留守にしていたこの二か月に何かあったのか?そう考えるのが妥当であり、事実そうなのだろう。
 だが、何があった。
「…、」
 そっと、唇を重ねる。
 抵抗は無い。
 寧ろ、
「ん、…は…っ」
 彼自ら、唇を開き、深く求めてくる。
 随分と慣れた様に舌をのばし、絡ませ、唾液が混ざりあう。
 漏れる声は甘く、次第に呼吸が乱れ。
 おかしい
 おかしい
 こんなのは"彼"ではない!
「…、アメティストス…?」
 強引に肩を掴み身体を引き離せば、彼は僅かに目を開き、首を傾げた。
「…何か、気に…障りまし、」
「何が…!」
 違う、彼はこんな求め方はしない。
 いつまで経っても抵抗心が完全になくなる事は無く、それでも私のする事をただ受け止め、やがて精神に勝る程の身の内から出る欲によって、漸く無意識に私を求めて来るのだ。
 そしてそれをも恥じらい、私はまたそれを理解し、意識させる様な言葉を繰る。
 だが、今の彼は
 先ほどの様は、そうだ、求め方すら慣れた様で。

 慣れた?
 慣らされた?
 誰に、

「何が…あった…?」
 離した姿をよく見れば、その異常さが一層わかる。
 二か月前此処を離れる頃には、私は滅多に暴力を振るう事はなくなっていた。なのに最後に見た姿より、どう考えても傷が増えている。こうした行為に至る前に私が与えていたものと同等、もしくはそれ以上の裂傷、擦傷、打撲痕。
 布一枚で出来た簡素な衣類も、破れたまま、ただ襤褸布をひっかけただけでとても衣類とは呼べない。
 何があった、など、答えは明白過ぎる。
 見張りにつかせ残した者たちが手を出したのだろう。
 彼の身分を明かしてはいないが、此の最奥に隔離するように捕らわれた状況、私の頻繁な来訪から少なくとも指揮官的な立場にはある者だとわかるだろう。此処へ訪れる時、最奥に立たせた兵は一時その場を離れる様に毎度指示してはいるが、私との会話を聞いている可能性も十分にある。
 兵達も当然元々は奴隷。身分の高い者というだけで怒りの対象となりえる。ましてや王となれば。

 そうだ、私とて、以前はそうしていた。
 彼が<王>であったから、怒りが向き、幾度も苦痛を与え続けた。
 だから、暴力を振るわれたのはまず間違いない。
 抱かれもしたのだろう。
 だが、それだけでは現状の説明にならない。
 私をいつもの名で呼ばず、その口調も下位の者が上位の者へと使うもの。瞳は虚空を見つめ。求める姿も不自然。そこに感情が伴わない。
 まるで別人ではないか。
 いや、これは、人形?
 これは

「…、血?」
「っ、」
 このにおいは、そうだ。
 彼の纏う布、寝具に血痕が付着している事はなんらおかしくはない。彼自身の傷を見れば当然である。
 だが、あれは?
 ふと視線を動かした先だ。室内の中ほどの地面に、黒い痕が広がる。
 翳ってよく見えない。近づき膝を付いてよく見る。
 やはり、これは血液の痕。
 拭き取ったのだろうが、正に拭き取っただけと言わんばかりに染みついている。
 その範囲を見るからに、とても少量とは言えない。彼が流したものか?
 繰り返せばいくらでも量なんて、だが、この広がり方は
「コレは、誰のモノだ…?」
 違う。まさか兵を一人返り討ちにでもした?まさか、彼がその様な事を―
「…っ、ぁ…」
 喉から漏れる掠れた声が私の思考を中断させる。
 背後の、彼のいる辺りで空気が震えた。
 刹那、

「ッァぁぁああああぁあああアアアアアアアアアッ!!!」

 静寂な空間に似合わぬ突然の爆音。
 いや、違う、声。
 その判断すら見誤るほどに唐突で、事態を把握しきれない。
 慌てて振り向けば、先ほどまで人形の様に動かなかった彼は、目を見開き、全身を震わせ怯えた様な顔で此方を―その痕を凝視している。
「は、ぁ、あ…、ゃ、か、ぁ、ァ、ッッ」
 酷く震えた手がゆっくり此方へ伸ばそうと、だがそれすら出来ぬのか
「ぁ、ああ、ゃ、め・・・っわた、し、が・・・っぁ、ああああぁああああああああ!!!!」
 両手で髪を鷲掴みにするように頭を抱え震え、やがてその目には涙が溢れ、止め処なく零れ堕ちる。閉ざそうとするのか言葉を発しようとしているのか、震え奥歯ががちがちと鳴り。
 それでもまるで頭を固定されたかの様に視線はその痕に定められたまま。
 狼狽え、判断の遅れた私は暫し、呆然と彼の様子を見るしかなかった。





続く
 

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