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レオン捕虜6 (1/2)
6話-1/2。
1 2-1、2-2 3-1、3-2 3.5
4-1、4-2 5-1、5-2、5-3
陰鬱。鬱々。
6話単体で見ると年齢制限ありませんが続きものなので一応R18
本文は続きを読むでどうぞ
6(1/2)
むしゃくしゃする?腹が立つ?苛立つ?
違う。
悔しい。歯痒い。後悔。 何と言えばいいのか分からない感情に攻め立てられる。
三日前の晩だ。久々の再開を喜んでみれば其処に待ち受けていたのは変わり果てた姿。それは一見、魂の抜け落ちた人形。調教されきった、言われた事を遂行する玩具。かと思えば私の知らぬ記憶だけを見続ける、過去に縛られた姿。
何があった、落ちつけ、話してみろ、
どれだけ肩を揺さぶろうとも、体の強張りは解けない。目を合わせようとしても焦点はもっと奥を見つめる。
やがて頭を抱え蹲り、苦しそうに呼吸を荒げ、意識を手放す。そうして束の間の静寂を迎えるのだ。
二日前も、昨晩も、そうだった。
そして、今も。
「あぁあああああああああッ!!!!!!」
「黙れ、五月蠅い!静かにしやがれってんだ!!」
暗い地下に足を踏み入れた瞬間響き渡るは絶叫。石造りの壁に反響し、より一層大きな音を響かせる。
慌てて最奥に駆け寄れば、牢の中には兵が二人と捕虜が一人。
「はなせっ、はなせぇええ!!カストルが、あああ私のせいで、カストルがあああ!!!」
「暴れんじゃねえ!ちきしょう、なんだってこんなキチガイ野郎…っ!」
「死ぬな、死ぬな、いかないでくれ、いやだいやだいやだいやだあぁあああああ!!」
捕虜の男は狂乱し叫び暴れ、兵の男に二人がかりで地に抑えつけられている。抵抗するも力が及ばない様で、やがて力なく顔を伏せ嗚咽だけが聞こえてくる。
なんて酷い。もはやそこに”王”の姿などない。それは無残に打ち捨てられ気が触れた捕虜でしかない。
「! 閣下!!」
「こ、これは・・!閣下、その、!」
やがて兵が此方に気づく。捕虜である男を抑える手が緩み、彼等は狼狽した様子で行動を迷わせた。この暴れる獅子を解放して良いものか、手荒く抑えつけていた事の是非を問われるのか、そんな処だろう。
「下がれ。」
兵の処遇など興味はない。低い声で、一言だけ告げる。二人の兵は一礼すると、駆け足でこの最奥から離れていった。
蹲る影がひとつ残された牢の中へ足を進める。
彼は気づかないのか、兵という拘束がなくなったにも関わらず変わらず地に伏したまま、肩を震わせている。
「…レオン、ティウス」
「……っ」
膝をつき、彼の隣でその名を呼べば、ゆっくりと手が伸ばされ私の服の裾を掴んだ。
震える手が、布地を強く握りしめる。
何を求めているのだろう、彼の瞳が映す失った面影か、それとも今縋るべきものか。その両方、なのだろうか。
嗚呼、何故こんな事になってしまったのか。
―何故、だと?
それを私が問うのか?
彼を憎み、彼を痛めつけ、苦しめようと、閉じ込め拘束し嬲り続けたこの私が!
留守を任せた看守達が彼に何をしたか、何故そうしたか。その切欠は間違いなく私が彼にした行為達。将軍である私が気に掛け、暇を見つけては甚振りにくる相手。それは憎き敵軍の王。
興味を持つのは至極当然だった。私がいる間こそ、その目を気にして手を出さずにいたのだろうが。
痩せ細った身体に刻まれる無残な傷痕達。その中の一部は紛れもなく私が与えたもの。
彼を赦した訳ではない。決して赦さない。彼は私の家族を奪った憎き地の国王、その事実は揺るがない。
だけど、だけど
「兄…、上……」
震える手をそっと上から握りしめる。
・・・熱い。
「・・・え、れ・・・、」
ゆっくりとあげられた顔はやはり涙に濡れ。酷く震え、奥歯をがちがちと鳴らせていて。
その額に手を当てれば、やはり熱い。
いつからだ、何故気付けなかった。違う、おそらく彼自身も気づいてなどいない。熱など、些細なことなのかもしれない。その熱も体調によるものか傷によるものか、震えも寒気なのか精神よりくるものか、そんな表面的な事象に対する理由なんて今考えてどうなる。ああ、憎い、何も気付けずにいた自分が憎い。
「わたしの、せ、い…で…わたし、の……」
…私のせいだよ、レオンティウス。
お前を生かし捕え、感情のまま傷つけ続けた私の責任だ。
私が憎むべき相手である”アルカディア王”はお前ではない。さして年が離れていないお前が私の養父母を殺められたはずなんてない。妹が死に、奴隷を解放し暫くして後先王の死を聞いた。私の大切なものたちが奪われたのはお前がアルカディア王になる前だ。私はそれをちゃんと…知っていた。
お前は、何も悪くない。
「エレ…フ…」
だけどそれを今さらお前に告げたところでどうなる?
あなたを赦せば、ぼくはどうしたら、
「……殺してくれ…」
震える口が、小さくはっきりと
焦点の合わぬ瞳が、やけに真っ直ぐ
「殺して、くれ…エレフ…私を…」
嗚呼、なみだがあふれて、とまらない。
彼の瞳から、静かに、変わらず流れ続け
私の瞳から、溢れ出し、視界に映す彼の顔が滲む。
「何…を…」
「殺せ、アメティストス」
やけに、はっきりと、
涙が一筋、その瞬間、弾ける。
「…ッ殺せ、殺してくれ!私など、私が、死ねばいい!カストルではない、私が、私が!!そうだ私なんて、いらない、いらない、死ね、いらないのに、どうしてまだ、もういやだいやだ、いやだああああああああああああ」
まるで、駄々をこねる子供がする様に、感情をそのまま、涙と共にぶつけて、でも、レオンティウス、私にはそんなことは
『 ヤ ァ 息 仔 ヨ 』
「!」
背に響く低い声。時折私を闇へ誘おうと向けられる手。いつからだろう、気が付けば知覚出来るようになっていた、其れが。
「――――ッ ……な、ん……で…」
彼の、背に、
くろい 影 が
く る な
「はやく、はやく、殺せ、もういやだ、いやだ、死にたい、殺してくれ、エレフ…何故私は生きなければいけな…っ」
「―レオンティウス…ッ!」
声を遮りその体を抱きしめる。力の限り、引き寄せる。その影を遮らなければ。
いやだ、彼は、奪わせない、連れていかせなどしない。
どうしてだ。どうしてこうなる。これが私のしてきたことの結果だというのか?
それとも運命はただ気まぐれに奪おうと?ふざけるな!何故彼を奪おうとする!
何故、私の大切なものばかり奪っていく!
続く