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2024年04月25日01時22分
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捕虜3.5話 レオン視点

2008年12月07日20時45分
エレレオ創作から暫く離れていたのでリハビリがてらに。
レオン陰鬱捕虜の蛇足的というか
ここまでのレオン心情で書き殴り+ちょい3話後日?談

今までのをよんでないとわけがわからないと思います。



 此処に来て、どれほどの時が経ったのだろう。
 太陽も見えぬ、蝋燭の灯のみを頼りにした生活では、日どころか朝と夜すら判らない。

 あの日
 バルバロイを統べる将軍と対峙した時、気づかなければこうはならなかったのか
 彼が死に、私が生きたのか
 私が死に、彼が生きたのか
 それとも変わらずこうして捕えられたのか

 気づいてしまった。
 気づいて、そうしたら、確かめずにはいられなくなった。

 あの日この手に掴めず零れおちた宝物。
 私の小さなきょうだい

 きょとんとした丸い瞳で私を見た妹
 母親を求め泣き叫んでいた弟

 同じ顔をしているのに対照的なふたりの姿
 忘れはしまい。私が守ると誓ったのだ。
 立派な王に、世界を統べる王に言われるまま訳も分からず育ち
 漸くあの日、私は彼らを守るために王になるのだと理解した。

 なのに
 消えてしまった。
 誰も教えてくれなかった。
 母上はただ謝り、臣下も口を閉ざし、ある者は亡くなったと言った。

「二人は生きています」
 王位を継いで初めてカストルが教えてくれた。
 弟のポリュデウケスが二人を連れ城を去ったこと
 それ以来行方は分からぬこと
 漸く、知った真実だった。


 長く求めた紫の瞳
 目の前にして、いてもたってもいられなくなった。
 幼き日聞いた名を、口にしてしまった。
 驚き眼を見開いた彼は、間違いなく、その名の持ち主である私の弟だった。

「愛するものを奪っただけではないか」
 その言葉に、私は動揺した。
 我が祖国が、アルカディアが、彼から奪った?


 気づいた時には槍を奪われ、捕えられていた。

 

 続く詰問。
 繰り返される暴行。

 私は告げた、己の知る全てを。
 些細な情報、伝聞でしか知らぬあやふやな。

 返される事実は酷く残酷で
 私にとっては見知らぬ世界のものがたりのようですらあって
 でも彼の生はその積み重ねだった。
 
 覚えてはいる。
 星女神の宮殿から生贄を捧げるという神託
 スコルピオスがその任に就き、無事成し遂げたとの報告は受けた。
 その生贄が、いもうと?

「あいするものをうばっただけではないか」

 彼の怒りも憎しみも全て、我らの業。
 嗚呼、受け入れるより他にはないではないか。
 

 

***

 

 昏い地下
 与えられるものは日に二度の食事だけ
 見張りの兵には私が王だとは伝えられていないのか、蔑むだけの目で見降ろしてくる。
 数日に一度湯浴みに牢を出されるが、当然拘束を共にする。
 張った湯に顔を抑えつけられる事も屡。
 食事も兵によっては投げ捨てられる。
 空腹感は否めない。
 数日に一度訪れる彼は、恨みと呪いの言葉を囁き続け、暴力を振い続ける。
 
 逃げだすのは簡単だ。
 こころを壊してしまえばよかったのだから。

 だが、私にはそれが許されなかった。
 彼の話す事が事実であれば、アルカディアはまだ攻略されず、兵も我が敗北を知らぬのか隠しているのか抵抗を続けているという。
 我が国が生きているのに、王である私が倒れるわけにはいかない。

 だが。
 我が国がした事は。


 独りの時間はただ苦痛だった。
 この暗く静かな空間には何もない。
 ただ思考が頭を巡り、闇に心を奪われそうになる。

 その点、暴力を振るわれている時間はまだ楽だったかもしれない。
 答えの出ない自問自答にただ「貴様のせいだ」と答えをくれる。
 
 もしかすると、このとき既に、壊れ出していたのだろうか。
 彼の怒りを受け止める、と自分の行動を正当化し、答えをくれる甘い痛みを求めていたのだろうか。
 歪みながらも、需要と供給はどこか一致していたのだろう。

 

 だが、そんな日々も終わりを告げる。
 一致など、していなかった。

 彼が私に求めるのは、行為を享受する事ではなかった。
「もうわかっただろう?これから何をされるのかをな。」
 何故だ、何故こんなことを、何故、何故
 わからない
 ただ疑問と懐疑と、屈辱と、訳のわからない感情が混ざりあい、彼の手を振りほどこうとする。
 だがそれは
 これも彼の怒りのかたち?
 憎き敵の王に与えたい仕打ち?
 私が受けるべき罰?
 なら、ならば
 私はただ、受け入れるしか、

 だが

 己の情けない姿を直視できず、目を背けた。
 なのに彼はそれを赦さない。
「それとも、実の弟に、だったか?」

 い や だ

 なのに、外部の刺激に体は反応する。
 

 何度も涙しそうになった。
 溢れそうになるのを堪え、時に、ただ快楽を受け入れようともした。

 なのに彼はそれを赦さない。
「解らぬ様だから言ってやる。私が貴様にしてやった事を、今度は私にしてみろ。」

 わからない、彼がわからない
 何を求めている?私に何をさせたい?
 私に施す行為も、何故そんなに楽しそうに
 私が拒絶するから?
 私が苦痛を浮かべるから?
 それがお前の求めるものなのか?


 情けなく、ただ彼のものを咥え、喉を突かれ噎び。
 早く終わらせたかった。
 彼が男であるとか、敵の将であるとか、弟であるとか、そんなこと、どうでも、
 どうでも、いいわけ。
 苦しくて苦しくて、逃げだしたくても逃げ出せなくて終わらせるしかなくて。


 彼が去った後、泣いた。
 憎しみ故だとわかりきっているのに疑問は私の頭を責めたて。
 服は破られ、身体も髪も薄汚く汚れ、地面に伏したまま、泣くより他なかった。
 それでも祖国を思えば倒れることも壊れることも出来ず
 それからもただ繰り返されるばかり。


 ただひたすらに思い知らされる。
 彼がどうやって生きてきたのか
 彼がいなければ知ることのなかった奴隷の現状。

 これほどまでに、非道い。


 わかっていた、どこかで。
 まさか繰り返される行為が、これだけで終わるなどとは思っていなかった。
 いつかは、最後まで犯されてしまうのだと、知っていた。
 だが、認めたくなかった。
 何度も繰り返され、それでも遊戯のような行為を施すまでで
 それすらも計り知れない苦痛ではあったが、これを繰り返すだけならば、次第に頭も麻痺し、慣れると思った。実際、手でされることへの抵抗なんてもう殆ど無くなっていたのだ。

 わかっていた、本当に、わかっていたのだ。
 だけど、だけど、だけど、だけど
 やはり


 痛みのせいもあった。
 知らぬ感覚に生理的な反射でもあった。
 それでも。

「レオンティウス、まさか、貴様」

 私がお前にうける行為のすべては私の罪であり、罰。
 だから私はすべてを受け入れようと、そう、決めた。
 守ると誓いながら、今日まで何もできなかった詫び。
 王として、兄として、彼を受け入れたかった
 歪んだ愛情表現だったのかもしれない。
 だけど


 もう、限界だ。

 口にせず堪えていたものが、全て、溢れ出す。
 どれだけ泣けば、どれだけ叫べば、何度助けを請えば赦してくれますか?
 
「レオンティウス!」
 体を強く叩かれ、自分が意識を失いかけていた事に気づいた。
 否、意識だけではない、精神までも持っていかれそうになっていた。

 まだ、赦してくれない。
 もう十分だろう?
 私が、我が国がお前にしてしまった事に対する償いには、まだ足りないというのか?

 ・・・足りぬに決まっているではないか
 甘えるな
 だが苦しい
 もう、わからない。

 

 

 

 

 


***

 

 目を覚ませば、まだ彼は隣にいた。
 彼も疲労した?それとも何かの気まぐれ?ただ私が目覚めた反応が見たくていた?
 理由はわからない。
 ただ、彼も、眠っていた。
 無防備に、だが

「・・・ん・・・・ッ・・・は・・・」
 額に、汗。
 眉間に寄せられた皺。
 悪夢でも見ているのだろうか。
 ぼうとした頭でただ彼の様子を見ていた。

「っ、・・・ミ・・・シャ・・・」
「!」

 堕ちる、涙。

 アルテミシア、我が国が屠った彼の、私の、きょうだい。
 彼の喪われた半身

 嗚呼、そうだ。
 私の罪が贖えることなど無いのだ。
 彼が罰として与えるというのならどんなことでも受け入れよう。
 いつか訪れる死の時まで、彼と共にいよう。

 それが私の罰であり、今の私の生きる道なのだから。

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